ケビン・ペックさんは21年の間ホーカー店主を勤め、引退後は「美味しい食べ物を探し回り続けることができる」という理由でタクシードライバーとなった、ローカルフードをこよなく愛する65歳だ。
シンガポール中の安くて美味しい一皿について誰よりも詳しいことを自負していて、ちょっと尋ねれば彼がこれまでに味わってきたホーカーフードについて淀みなく永遠と語り続けてくれる。
「50〜60年代に生まれの典型的なシンガポール人」を自称するケビンさんは、その世代の典型に漏れず、ミレニアル世代が愛するような流行りの料理を手放しで褒めるようなことはしない。彼が愛するのは、手間と時間をたっぷりかけて準備され、調理された料理たちだ。そしてその料理はホーカーセンターにある、と彼は言う。
「シンガポールのどこにおいしい料理があるかって?真の食通に聞くには、答えが多すぎる質問だね!」ケビンさんは力強く言う。
「どんな人でも自分好みのものを見つけられるところといえば、いちばんはチャイナタウンかもしれないね。チャイナタウンがどんな歴史を経て今の形になったか、知っている人はあんまりいないだろ。昔のチャイナタウンといったら、それはもう混乱状態で、一族がテリトリーをきっちり持っていて、ほかの一族のテリトリーに入ることは一切許されてなかったんだ。入る時は、戦争の時くらいだね。それが結果的に、細かく分かれたエリアそれぞれが独自の食文化を持つことに繋がったんだ。驚くよなあ。文化とか伝統っていうのは、そういうプライドみたいなところから生まれるものなんだねえ。」
「おすすめのストールは、ホンリム・フードセンターのカレーチキン・ヌードル「Da Hua Rou Cuo Mian(大华肉脞面)」(ダー・フア・ミンスド・ミートヌードル / Da Hua minced meat noodles)と「Ma Po Lu Mian (蔴坡卤面) 」(マレーシアの煮詰めた麺)かな。」
「チャイナタウン・コンプレックスの土鍋ご飯、蒸し魚の頭、様々なDun Tang(炖汤/火鍋スープ), Zhu Du Ji(猪肚鸡 /豚の内臓に鶏肉を詰めた料理), 小籠包も忘れちゃいけないね。もちろん他では飲めない「Wu Shi Nian Dai(五十年代)」のコーヒーも欠かせない。オリジナルな文化と歴史を持っているお店と料理が本当にたくさんあるんだ。世代を超えてみんながそのことを理解して感謝していかなきゃいけないと思うよ。」
ケビンさんは、シンガポールに初めて来たならば、食べ歩きを丸1日やるべきだ、と主張する。
「MRTでもタクシーでも、なんでも良いからいろいろなところに行って隠れた名店や絶品料理を見つけるんだ。間違いなく友達に自慢できるだろ。」
ミカエル・トーさん59歳もまた、ローカルフードをこよなく愛する一人だ。彼のホーカーフードの楽しみ方はケビンさんとは異なり、ランチやディナーのために立ち寄ったホーカーで長蛇の列を見つけたらその店にトライする、という方法だ。「人々が喜んで待つお店は当然美味しいお店」「期待して待つことも美味しいアクティビティ」というのが彼の意見だ。
Fu Jian Chao Mian Chao Xia Mian(福建炒面炒虾面/福建地方の味付けがされた海老の焼きそば)、ワンポアの特製チリを添えたナシレマ、ウェスト・コースト・フードセンターのインディアン・ロジャック(Indian rojak / 果物と野菜を揚げたローカルフード)、Yun Tun Mian(云吞面/ワンタン麺)、Shui Guo(水粿/大根入りの蒸し餅)、魚と豚肉の雑炊、チョンバル・マーケットのZhu Du Tang(猪肚汤/豚の内臓煮込みスープ)などなど、挙げればキリがない。ABCブリックワークスのワイルド・ワイルド・ウエスト・ウエスタンフード(Wild Wild West western food)とBedok85 Rou Cuo Mian(肉脞面/ひき肉麺)も彼のお気に入りだそうだ。
「欧米人だと思うんだけど、熱心な食通をタクシーで拾ったことがあってね。あれは嬉しい驚きだったな。僕も知らないトアパヨのコーヒーショップのことを教えてくれたんだ」
「コロナ禍でシンガポール航空の乗組員を辞めた2人がやってるサラワク・ラクサ(マレーシアのラクサ)の新しいお店なんだけどね。2人の情熱には本当に頭が下がるよ。あれだけ美味しいラクサのレシピは、どうやって開発しているのかねえ。」
ミカエルは趣味でよく料理をし、ホーカーのレシピを模倣しようとするそうだ。
「同じ結果になることはほとんどないね。秘密の何かが入ってるんだろうねえ。尊敬するよ。」
中華、マレー、インドなどなどシンガポールらしい多国籍で、しかも美味しくて安い料理やお店の数々をタクシー運転手の2人から聞くことができた。みなさんにもぜひ、ローカルの人たちに好みのホーカーフードを聞いてみてほしい。その好みや味覚の違いにきっと驚くことだろう。
ホーカーセンターで誰かの隣に座ったならば、ぜひそんな会話をしてみてほしい(もちろんコロナ感染対策はしっかりした上でだが)。ローカルフードについては、誰しも語り出したら止まらない自分の好みを持っている。たくさんのローカルフード情報を得ることもできるだろう。これもまた、ホーカー食べ歩きならではの楽しみだ。
もちろん、このWAK WAK HAWKERを使うというのもお気に入りのホーカーフードを見つけるために有効な手段だ。WAK WAK HAWKERに掲載されている最新情報は、ホーカー食べ歩きをより充実したものにすること請け合いだ。シンガポール滞在が数日しかない場合に効率的なホーカー周りにも役立つだろう。
WAK WAK HAWKERは、みなさんのホーカー食べ歩きを心から応援している。使いこなして、ぜひ楽しく食べ歩いて欲しい。